高地トレーニングの実践ガイドライン -競技種目別・スポーツ医科学的エビデンス-

高地トレーニングの実践ガイドライン

【編著者】 
 青木 純一郎(元順天堂大学名誉教授、元副学長)
 川初 清典(北海道循環器病院心臓リハビリセンター長)
 村岡 功(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)
【著者】
 川原 貴(国立スポーツ科学センター スポーツ医学研究部)  
 小林 寛道(東京大学名誉教授)
 前嶋 孝(専修大学社会体育研究所教授)
 吉本 俊明(日本大学文理学部教授)
 米田 継武(順天堂大学名誉教授)
 若吉 浩二(びわこ成蹊スポーツ大学教授)
【発行日】 2011年2月刊行
【価格】 定価2,400円+税

 

 
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【はじめに】

 いま、我が国では「スポーツ立国」戦略が策定され、国際競技力向上が声高に謳われている。長野オリンピック冬季大会(1998)を成功させ、国立スポーツ科学センターを発足(2001)させたのに続く流れであり、みんなが共通に願うスポーツ発展に向かううねりである。この間にも世界ではスポーツの記録は縮まり、技術は高まり続けている。それは、科学技術の加速度的発展に基づくスポーツ科学の競技力向上支援に多くを依存していると思われるが、競争を旨とする領域なので開発される支援手法がおおやけにされていないのも多いと思うべきである。

 さて、長野五輪に7年先だって、日本オリンピック委員会事業として日本体育協会に「JOC高所トレーニング医・科学支援」の研究班(班長:青木純一郎順天堂大学教授、当時)が置かれ、おもだったスポーツ種目の高所トレーニングの医・科学支援が2001年度まで続けられた。活動では当時先進性が強かった「高所トレーニング」に関する基礎的な検証を行うとともに、陸上、水泳、スキー、スケート等の競技種目の実践的なスポーツ医・科学支援を主にナショナルチームを対象に果たした。毎年度の個別的な支援テーマの成果が各年次の「JOC高所トレーニングスポーツ医・科学サポート」として「日本オリンピック委員会スポーツ医・科学研究報告」に収められ、11年間の継続の終了時に「高地トレーニング~そのスポーツ医・科学的背景と指導指針」がその全体報告として日本体育協会から出されていたところである。この研究班に対しては、2005年度に第8回秩父宮記念スポーツ医・科学賞奨励賞が授与された。青木班長は受賞を機として上記の全体報告書を改めて成書として出版し、これら研究成果を一般に普及すると共に、競技力向上のこれからの礎になるようにと考えられた。編集の過程で、当時順天堂大学副学長をはじめ多くの要職に在りご活躍されながら、体調を崩されて闘病し、本書の編集半ばまで原稿の手直しを続けられ他界された。編集の最終過程で「高地トレーニングの健康チェック」の必要性を班長自身で執筆することになっていたのであるが叶わず、国立スポーツ科学センタースポーツ医学研究部、川原 貴主任研究員にご執筆をお願いし本書に掲載することが出来た。
 原稿逸失などが心配される中「この成果を埋没させられない」として出版のためにその後も尽力してここに漕ぎつけられたのは、順天堂大学副学長秘書、横井祐子氏のはたらきに負ったからである。 

平成22年10月20日

川初 清典
村岡 功

 
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【目次】

1章 陸上競技の高地トレーニング 小林 寛道

  1. 陸上競技における高地トレーニングへの関心と研究の経緯
  2. 高地トレーニングの再開の背景
  3. 日本陸連の高地トレーニング
  4. 競歩の高地トレーニング
  5. 短期的高地トレーニング
  6. 高地トレーニングの成果

2章 水泳競技の高地トレーニング 若吉 浩二

  1. 水泳と高地トレーニング
  2. 高地トレーニングの環境と条件
  3. これまでの高地トレーニングの成果
  4. マクロ・トレーニング計画
  5. ミクロ・トレーニング計画
  6. トレーニング効果の評価:血中乳酸カーブテスト
  7. コンディション管理

3章 スキー競技クロスカントリーの高地トレーニング 吉本 俊明・岩崎 賢一・鈴木 典・水落 文夫・竹田 正樹・竹野 欽昭

  1. クロスカントリースキーの競技特性
  2. 期待される高地トレーニングの効果
  3. 高地トレーニングの概要
  4. トレーニングの管理
  5. コンディションの評価
  6. 常圧低酸素環境システム(低酸素テント)の利用
  7. トリノオリンピック事前キャンプにおけるディスタンス競技種目選手のコンディショニング

4章 スキー競技・ノルディック複合の高地トレーニング 川初 清典

  1. スキー・ノルディック複合とその今日
  2. クロスカントリースキーは長距離走である 
  3. 高地トレーニング重視化提言の背景
  4. ノルディック複合の高地スキートレーニングの効果を考える
  5. 高地トレーニングの生理学的測定値に見る効果
  6. トレーニングの高度化に向けて
  7. 高地クロスCSコース

5章 スケート競技・スピードスケートの高地トレーニング 前嶋 孝

  1. スピードスケート選手に対する高地トレーニングの有効性について
  2. 菅平(標高1,300m)を利用したトレーニング
  3. フラッグスタッフ(標高2,135m:アメリカ・アリゾナ州)を利用したオフシーズンのトレーニング
  4. パークシティー(標高2,100m)合宿における医・科学サポート
  5. パークシティーにおけるソルトレークオリンピック直前合宿とオリンピックの成果
  6. スピードスケート選手にとって効果的な高地トレーニングの方法

6章 バイアスロン競技の高地トレーニング 米田 継武

  1. バイアスロン競技の特性と高地トレーニングの意義
  2. 高地トレーニング医・科学サポート
  3. バイアスロン競技と高地トレーニング
  4. バイアスロン高地トレーニングの医・科学サポートの実際
  5. バイアスロン高地トレーニングのガイドラインのまとめ

7章 低酸素施設の利用

[1]低酸素施設での生活 村岡 功

  1. 従来型高地トレーニングの問題点と新しい高地トレーニングの考え方 
  2. 低酸素施設での滞在による生理・生化学的効果
  3. パフォーマンスへの効果とそのメカニズム
  4. 低酸素施設滞在における問題点と今後の課題

[2]低酸素施設でのトレーニング 小林 寛道

  1. 低酸素環境での最大運動
  2. 低酸素環境での間欠的運動
  3. 低酸素環境を利用した持久的トレーニング

[3]低酸素施設を利用したトレーニング 前嶋 孝 

  1. 常圧低酸素室の試作とトレーニングの有効性についての検討
  2. 実験室から現場への応用
  3. 低酸素室酸素濃度の検討
  4. オリンピック1ヵ月前の低酸素トレーニング
  5. オリンピック直前の低酸素トレーニング
  6. 低酸素トレーニングの繰り返しによる7年間の効果

8章 高地トレーニングと健康チェック 川原 貴

  1. 高地におけるコンディションや健康に影響する要因
  2. 事前のチェック
  3. 高地トレーニングにおけるコンディションのモニター
  4. 高山病

 
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