新版コンディショニングのスポーツ栄養学
【序文】
新版の発行に当たって
大学や専門学校で体育学・スポーツ科学を専攻する学生が“スポーツ栄養学”の基礎知識を学ぶとともに、選手やトレーナーなどとして実際のスポーツ活動に参加する際に役立つテキストとして『コンディショニングとパフォーマンス向上のスポーツ栄養学』を出版してから6年以上が経過しました。『コンディショニングとパフォーマンス向上のスポーツ栄養学』は、出版当初から好評を得て、多くの大学、専門学校でテキストとして採用して頂き、スポーツに関わる学生諸君の“コンディショニングとパフォーマンス向上”に少なからず貢献できたものと思っています。
しかし、この6年の間には、健康の保持増進、生活習慣病予防という観点からは、栄養の専門家向けに『日本人の食事摂取基準2005年版』(厚生労働省)が策定され、一般人向けには「食事バランスガイド」(厚生労働省、農林水産省決定、2005)も作成されました。また、スポーツ選手向きには、国際オリンピック委員会(IOC)医学部会の依頼により、スポーツ栄養専門家グループがスポーツ栄養に関するコンセンサスミーティングを開催し、“The IOC Consensus on Sports Nutrition 2003: New Guidelines for Nutrition for Athletes”(International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism,2003)として出版し、国立スポーツ科学センター(JISS)においても、平成16、17年度に「スポーツ選手の食事摂取基準量に関する研究プロジェクト」が実施され、アスリートのエネルギー・栄養摂取に関する報告が出されています。
そして、この間、JISSのスポーツ医学研究部(栄養指導室)や国内の各競技団体、さらにはさまざまなスポーツチームや選手個人における栄養・食事サポートの経験も、管理栄養士を中心に蓄積されてきています。また、サプリメント市場の拡大は確実に、スポーツをする人々にも、その影響が広がってきており、最新の知見を加えることが必要になってきています。
このようなスポーツ栄養を取り巻く状況の急速な変化を背景として、“新しいスポーツ栄養学のテキストを!”という声が多くの方々から寄せられていました。そこで、今回、これまでのテキストを踏まえながらも、新たに若手から中堅のスポーツ栄養研究者・指導者を加えて出版することにしました。そして、タイトルも『新版コンディショニングのスポーツ栄養学』としました。それは“スポーツ栄養学”で最も強調しておかなければならないことは、“日々の理にかなった食生活が選手のコンディションを整える”ということであり、それなくして“スポーツパフォーマンス”の向上は望めないと考えるからです。
スポーツ栄養に関わる教育と研究、そしてスポーツ現場での指導に携わっている本書の執筆者は、それぞれの活動において多忙を極めており、新版は予定よりも大幅に遅れての出版となってしまいましたが、ようやく多くの方々のご要望にお応えできることになりました。執筆者一同、本書がわが国におけるスポーツ栄養の教育と指導にこれまで以上に役立つことを心から願っています。
2007年9月
早稲田大学スポーツ科学学術院
樋口 満
【初版序文】
『コンデイショニングとパフォーマンス向上のスポーツ栄養学』発刊にあたって
シドニーオリンピックからすでに半年が経ち、オリンピックで活躍したトップアスリートの栄養・食事サポートに関する報告も一段落してきたところです。
“スポーツ栄養”というと、とかくトップアスリートを対象とした栄養・食事サポートに眼が向けられがちであり、その成功例だけがとりざたされる傾向があります。しかし、これらトップアスリートが基礎的な体力と技術を身につけ、実践的な力を高めるために、長い年月をかけてトレーニングすることによってトップレベルに到達したように、スポーツにおけるコンデイショニングとパフォーマンス向上のための栄養・食事サポートにおいても、指導者や選手が科学的理論を理解し、それを踏まえた様々な実践例を学び、自ら実行することによって、選手の記録更新やチームの勝利に貢献できるようになるのではないでしょうか。
これまで、多くの「スポーツ栄養」に関する書籍が国内外で出版されています。私もイギリスとオランダのスポーツ栄養の教科書の翻訳に関わってきましたが、それらはいずれも良書ではありますが、やはり日本におけるスポーツ選手の栄養・食事指導書としては不十分なものだと感じていました。日本において「スポーツ栄養」に関して研究したり、選手を対象として実践指導している専門家の手による、日本人選手や体育専攻の学生向けの「スポーツ栄養」のテキストが今こそ必要であることを痛感していました。
この度、大学や専門学校で体育・スポーツを専攻する学生に対して栄養・食事の指導・教育に当たっておられる諸先生方に分担執筆をお願いしたことによって、学生諸君がスポーツ栄養の基礎を学ぶとともに、実際のスポーツ活動において役に立つようなテキストを作成することができたと思います。いくつかの章で記述の内容が重複しているところもありますが、それはその項目がスポーツ栄養にとって重要であることを示しているものと理解していただきたいと思います。本書の出版が日本のあらゆるスポーツの分野において、選手やチームのコンデイショニングとパフォーマンス向上に貢献できればと著者一同願っています。
編著者 樋口 満
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【目次】
1章 スポーツ選手の食事摂取の基本 樋口 満
-
スポーツにおける栄養の役割とエネルギー供給システム
COLUMN:日本人の食事はスポーツ選手向き
2章 トレーニングとエネルギー消費量 高田 和子
- 1日の総エネルギー消費量の構成
- 基礎代謝量
- 食事誘発性熱産生
- 1日の総エネルギー消費量の評価
- エネルギーバランスをとる
COLUMN:レジスタンストレーニングのエネルギー消費量
3章 スポーツ選手の身体組成と貯蔵エネルギー 甲田 道子
- スポーツ選手の身体組成
- 身体組成の測定方法
- 貯蔵エネルギー
COLUMN:体脂肪率測定の落し穴
4章 エネルギー補給 鈴木 志保子・柳沢 香絵
- エネルギー代謝
- 運動時のエネルギー補給法
- エネルギー摂取量別エネルギー補給法
COLUMN:糖質(穀類)を摂ることが大切
5章 からだづくりとたんぱく質摂取 鈴木 志保子
- たんぱく質の種類
- たんぱく質の働き
- 食品のたんぱく質の栄養価
- たんぱく質の消化と吸収・代謝
- たんぱく質摂取基準
- 運動時のたんぱく質摂取基準
- 食事および食品からのたんぱく質摂取
- たんぱく質およびアミノ酸の摂取に関する注意
COLUMN:日本の競技選手のたんぱく質摂取量
6章 骨づくりとカルシウム摂取 田中 千晶
- 体内におけるカルシウムの役割と代謝
- カルシウムの必要量と摂取量の現状
- カルシウム蓄積量の評価法-骨塩定量法
- カルシウム摂取の影響
- 骨づくりのための運動
- アスリートとカルシウム
- Female Athlete Triad
COLUMN:身長とカルシウム摂取
7章 貧血予防と鉄・たんぱく質摂取 亀井 明子
- スポーツ活動と貧血
- スポーツ選手の鉄栄養状態の評価
- スポーツ選手の貧血予防と食事
COLUMN:スポーツ選手の鉄欠乏性貧血を改善するためにはどうしたらよいか?
8章 コンディション維持とビタミン摂取 木村 典代
- エネルギー産生とビタミン
- 体づくりとビタミン
- 抗酸化ビタミンの役割と抗酸化性食品
- コンディション維持のために
COLUMN:飲酒・喫煙とコンディショニング
9章 水分補給 呉 泰雄
- 水分
- 体温調節
- 脱水
- 暑熱適応
- 飲料摂取
- スポーツドリンク
COLUMN:正しい水分補給のポイントは?
10章 サプリメントとエルゴジェニックエイド 岡村 浩嗣
- どんな時にサプリメントが有用か
- サプリメントの分類
- サプリメントとドーピング
- サプリメントを選ぶときに考えるべきこと
COLUMN:サプリメントZと思い込み効果?
11章 試合前後の食事 田口 素子
- 試合前の食事調整
- 試合間の補給
- 試合後のリカバリー
- 遠征期および国際試合などでの注意点
COLUMN:高糖質の食事をするにはどうしたらよいか
12章 トレーニング期の食事管理 小清水 孝子
- エネルギー供給機構からみたスポーツ種目特性と食事の考え方
- トレーニング期の食事管理の実際
- 減量時の献立の考え方
- 競技者の栄養アセスメント
COLUMN:「補食」≠「おやつ」
13章 スポーツ選手の栄養教育 石田 裕美
- 栄養教育の考え方
- 選手のライフステージ別の栄養教育の特徴
- 栄養教育の対象者の明確化と連携体制づくり
- 栄養教育の進め方
COLUMN:スポーツ選手の食事調査
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