からだの原点~21世紀[養生<ようせい>学]事始め~
【著者】
湯浅 泰雄(桜美林大学名誉教授)[哲学、日本学、深層心理学]
横澤 喜久子(東京女子大学教授)[健康・運動科学、運動生理学]
伴 義孝(関西大学教授)[身体運動論、体育原理]
養老 孟司(東京大学名誉教授)[解剖学]
跡見 順子(東京大学大学院教授)[生命環境科学、運動適応科学]
立川 昭二(北里大学名誉教授)[歴史学、医療史]
張 勇(長野県短期大学助教授)[健康政策、体育測定・評価]
田中 朱美(東京女子医科大学教授、同大学付属東洋医学研究所教授)[精神医学、東洋医学]
遠藤 卓郎(筑波大学教授)[気功学、ボディーワーク論]
(執筆順)
【発行日】 2003年4月10日
【ISBN】 4-9900743-9-4
【判型】 A-5
【ページ数】 188
【写真図表】 45
【価格】 定価2,100円(税込)
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【はじめに】
私たちは一人ひとりの尊いいのちを大切にはぐくみ、誰もがもって生まれた生きる力をひきだし、精いっぱい生きたいと願っています。
本書は1999年に誕生した「大学体育養生学研究会」からのメッセージとして、「生きる力」の本質的問題を「からだの原点」から問い直し、伝統的東洋の自然観、人間観、身体観を見直して21世紀の養生を提案します。ぜひ、皆様のご意見、ご批判などいただき、ともに養生(生きる力を養う)を考えていきたいと願い、出版されたものです。
私たちの社会は世界一の長寿国であり、物質的にもかなり恵まれて生活しています。にもかかわらず、現代人は生活・健康に不安を感じ、心の安定、癒しを求め、生きる力が弱まり、人間力が衰えているといわれます。科学・技術が日に日に進み、人間社会への影響は著しく、生活そのものを変えられてきました。科学・技術は人類の高度な精神活動の知的所産です。これらの発展はひとりひとりの健康で平和な生活につながってほしいものです。
「生」への願いは時代や文化が違っても、基本的には変わらないでしょう。私たちは人間が自然の一構成員であり、からだが自然そのものであることを忘れてはいないでしょうか。頭の中だけで考えることばかりに重きがおかれ、からだで学ぶこと、からだで覚える規範や原理を忘れているようです。からだで覚える知恵や創造力、からだで学ぶ判断力等の身体の限りない深い能力を磨き損なっているような気がします。心とからだの働きを区別して捉える人間の考え方も再検討する必要があると考えています。
私たちの「大学体育養生学研究会」設立趣旨は次のようになっています。
「西洋的近代科学の考え方を拠り所として生活している現代人は東洋の伝統的な養生法に対して、古いもの、科学的でないものと考えがちです。西洋的近代科学が日本に登場しだしてからわずかな時間しか経っていません。ところが私たちは、そのわずかなあいだに、日本古来からの、あるいは東洋思想としての知恵を忘れ去っているようでもあります。これまでの東洋古来の養生思想や健康思想を一瞥するだけでも、そこには、大いなる文化遺産の数々を見つけることができます。私たちはこの大いなる文化遺産を忘れ去るのではなく、現代科学の貢献を頼みとしつつも同時に「原点」と「科学」との、あるいは「東洋思想」と「西洋思想」との融合を図りながら、人間存在を「生」の原点から全方位に理解していくことが問われているのです。本会はそうした研究成果に基づいて、日本の時代状況を照射しながら「からだの原点」を問い直す視点から問題提起を発信し、広く各界に裨益することを目的にしています。私たちはここに、「養生学」の始まりを発信したいと思います。
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【目次】
序章 今日のからだの思想 ... 湯浅 泰雄
- 静と動-心身関係の表層と底層
- 呼吸法-心身関係の深層的関連
- 技の訓練の意味-修行法、自己健康法、精神的向上
- 主体的身体と客観的身体-身体には一人称と三人称の両面がある
- 世界内存在としての人間
- 宇宙の生命と一体になる人間形成
[1] 生きる力を育む21世紀養生考 ... 横澤 喜久子
- 教育の問題
- この50年の健康・からだ教育を振り返る
- 21世紀の健康づくり -からだの復権-
- 欧米に広がる東洋的身体観・技法
- 養生のはじまり
- からだの原点を知る
- 伝統的養生思想・身体技法と科学の融合を図る
[2] 『生きる力』とはなにか-その本質を改めて問う ... 伴 義孝
- 問題の所在
- 『生きる力』の本質
- なぜ、「1996年」なのか
- 「見えぬものでもあるんだよ」の問題
- モノ化し操作される身体
- 結語:いつも変わらぬ闘い
[3] からだと自然 ... 養老 孟司
[4] からだの中の40億年-運動が生むこころ・意志を支えるからだの「理」<ことわり>- ... 跡見 順子
- 動作のなりたちと身体
- 脳のなかの身体地図
- 赤ちゃん学会
- 動と静
- 骨とDNAと人間
- 理解 -引き寄せて考える
- 熱の揺らぎを利用して収縮するタンパク質システム
- 細胞骨格との出会い:細胞にも骨組みがある
- ホメオスタシス:生命活動が成り立つ条件
- 良いストレスと悪いストレス
- 人間の生物学と「身」の中の「理」
[5] 貝原益軒『養生訓』に学ぶ ... 立川 昭二
はじめに* 『養生訓』の立場
- 「気」の思想
- 「自然」の思想
- 呼吸と導引
- 身と心
[6] 東洋という視座-伝統的中国養生思想に学ぶ- ... 張 勇
- 養生とは
- 自然と養生
- 「気」とは何か
- からだの見かた
- 対立と調和・陰陽五行
- 心身をはぐくむ・形神共養
- 21世紀の養生法
[7] 精神科医の立場から ... 田中 朱美
- 国語は体育
- 精神疾患の時代的変遷
- ライフサイクルと発達課題
- 現代社会を考える
- 現代社会のストレス
- ストレスと心の病気
- 自律神経失調症
- 心身症
- 神経症
- うつ病
- 西洋医学的治療法
- 東洋医学
- 東洋医学的治療法
- 東洋医学と「気」の効用
- 心身のバランスを整える方法
- リラクゼーション法
- 気功の授業から -学生の体験を見る
- どんな授業で?
- 気功・呼吸法の教材としての特性
- 大学体育における意味
【あとがき】
養生<ようせい>学のすすめ
「養生」を日本語では伝統的に「ようじょう」と読んで来たのは、本書にも登場する貝原益軒の『養生訓』を持ち出すまでもなく、周知のことである。しかし本書では「ようせい」と読ませている。おそらくほとんどの読者にとって初めて聞く耳新しい読み方であろう。「ようじょう」として慣れ親しんできた「養生」をどうしてわざわざ「ようせい」と読ませるのか。あるいは読まなければならないのか。そして、どうして「養生学」なる学問が創始されるに至ったのか。その答えは本書の中にある。
「養生学」は、21世紀に「人間が人間らしく生きる」ための知恵を実践的に探求することを使命とする新しい学問としてスタートした。人間の「からだ」と「養生」に関わるあらゆるテーマについて、高校生、大学生、大学院生、大学や企業の研究者、市民講座で学ぶ一般市民など、21世紀を健康で心豊かに生きたいと冀うすべて世代の人々が、「養生学」の旗の下に集い、その探求に従事せられんことを乞い願うものである。
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