ヒトの動きの神経科学―ユニークな神経生理学の基礎と臨床への統合―

ヒトの動きの神経科学【監訳】
 松村 道一(京都大学総合人間学部自然環境学科 教授)/森谷 敏夫(京都大学大学院人間・環境学研究科 教授)/小田 伸午(京都大学総合人間学部自然環境学科 助教授)
【原書】 The Neuroscience of Human Movement
【著者】 Charles T. Leonard (Associate Professor Director, Motor Control Research Laboratory Physical Therapy Department The University of Montana)
【発行日】 2002年4月27日
【ISBN】 978-4-9900743-5-7
【判型】 B-5
【ページ数】 260
【図表】 99
【価格】 定価3,800円+税

 

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【内容】
本書は主に2つの読者層に向けて書かれたものである。1つは運動制御あるいはリハビリテーションを学ぶ学生たちである。学生たちの大半は神経学を生涯の学問として捉えていない。また、基礎科学科目と臨床科目は別個であると考えて、両者の統合にはなかなか目が向かない。本書が、学生や教官がこのような知的統合を行う際の手助けとなり、様々な教科科目間を繋ぐ教科書として使用されれば幸いである。

もう1つの読者層は臨床医の方々である。この本は最新の情報と基礎的な神経科学の概説を統合しようとしている。したがって本書によって、基礎的な神経科学のテキストを読むという無味乾燥で単調な作業や自分の仕事に関連する研究の探索に時間を費やす必要はなくなる。また臨床医にとって治療方法の科学的基礎を理解することは極めて重要なことであるが、自分の手法を客観的に評価するための科学的基礎がこの本には記述されている。

第1章はまさに神経科学の紹介である。語彙と基礎的な神経系組織を概説している。

第2章は運動と直接関連する基礎的構造や神経統合を概説している。まず様々な名称を覚え神経科学の土台を理解し、構造を機能と関連づけて理解して頂きたい。

第3章は基礎的な神経生理学とヒトの運動制御の関係に重点を置いて記述した。

第4章は運動に関連して絶えず変化する大脳皮質の魅力的な役割について紹介する。

第5章と第6章は、ヒトの移動運動、目と手の協調、そして上肢の運動制御における神経系の基礎を紹介している。これらは4章までに論じられた概念を基に記述されており、読者を確かな事実の世界から、より抽象的な仮説と推測の世界へと導いてくれる。ヒトの運動の重要な側面に関して論じられている最先端の研究成果に触れた読者は、基礎と臨床科学が融合される喜びを感じるであろう。

第7章は運動学習の神経基礎について考究している。全ての章の中で最も理論的な章であり、この章を理解するには、6章までで論じられた神経科学の原理を正確に把握することが要求される。

この本ではかなり砕けた表現を用い、愉快なエピソードをいくつも挟み込んだ。ニューロサイエンスを学習する上では、ユーモアセンスはほかの5つの感覚と同じくらい欠くことができない。私たちがニューロサイエンスに初めて引きつけられたときの驚きや魅力を、今度は今の学生たちに伝える役割があると考える。

神経系の振る舞いに関する基礎研究に対する魅力と恐れは、今もなお続いている。私のこの心の動きが読者に伝われば望外の喜びである。

Chuck Leonard, PT, PhD

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【目次】
1章 神経系の用語紹介

  • 神経系とは?
  • 末梢神経系
  • 中枢神経系細胞[サテライト細胞/感覚ニューロン/運動ニューロン/介在ニューロン]
  • 神経投射[樹状突起と軸索/シナプス/灰白質と白質]
  • 氷山の一角

2章 形態と機能

  • 自律運動と非自律運動:反射運動の話
  • 筋紡錘
  • ゴルジ腱器官とIb求心線維
  • 脊髄
  • 脳幹[網様体/前庭系/赤核]
  • 大脳基底核[命名/基底核機能の検査方法/皮質-線条体-視床-皮質グループ/運動に関連した神経活動/機能の理論的展望/基底核障害患者/基底核障害患者の治療/基底核と小脳の進化]
  • 小脳[神秘へのいざない/解剖学的分類と機能的分類/深小脳核/小脳の 機能/小脳の障害]
  • 視床[進化/構造と機能/視床の障害]
  • 大脳皮質[進化とアリストテレスの間違い]

3章 反射運動と運動制御の基本原理

  • 神経伝達と信号処理に関する一般原理
  • 主働筋活性化の反射回路
  • 拮抗筋活性化の反射回路[Ia抑制性介在ニューロン-介在性抑制/レンショウ細胞-反回抑制/Ib線維-非相反性抑制(内因性抑制)/抑制機構の編成]
  • 屈曲反射[定義と説明/痙性における屈曲反射/歩行動作における屈曲反射]
  • セントラルパターンジェネレータ[定義と説明/CPGとヒトの移動運動]
  • 反射活動の調節[シナプス前抑制/シナプス前促通/神経調節器と神経調 節/長期シナプス相乗作用と長期促通]
  • 皮質間の長潜時反射
  • 反射弓の下行性抑制[網様体脊髄路/前庭脊髄路/赤核脊髄路]
  • 脊髄への結合性の意識性と無意識性

4章 運動における大脳皮質の役割

  • 専門用語と基本的原理[大脳統計学/脳の各名称の紹介/脳地図およびスキャニングの手法/皮質野の構成と機能的単位/皮質間回路]
  • 発育発達[全てのヒトが未成熟の不安定な時期を示す/細胞移動/初期の 充溢/退行/初期の活動の重要性/神経における進化論]
  • 運動皮質と移動運動
  • 大脳皮質の上肢コントロールに対する貢献[上肢のコントロール/視覚運 動の変質/皮質細胞集合体とポピュレーションベクトル:リーチング 動作への貢献/掴む動作の皮質コントロール]
  • 運動野に対するダメージの臨床的明示[運動野/運動前野/運動補足野/第1次体性感覚野/第2次体性感覚野/前前頭皮質/後頭頂皮質]
  • 左右半球の特異的役割:運動制御との関わり

5章 ヒトの移動運動の神経制御

  • ヒトの移動運動の個体発生の発達[ヒトの移動運動の神経学/神経集合/セントラルパターンジェネレータ/末梢受容器と求心性神経/屈曲反 射求心性神経/脳幹移動運動関連領域/小脳/大脳基底核/大脳皮質]
  • ヒトの移動運動の神経薬理学[運動/シナプス後受容器の生理学/神経伝達物質]
  • ヒトの歩行運動の臨床的分析[歴史的考察/コンピューターによる歩行分析]
  • 生体力学的考察と神経生理学的考察の統合

6章 頭、眼、上肢協調の神経制御

  • 知覚運動/視運動協調[感覚知覚/視運動反応]
  • 頭と眼の協調
  • 手と眼の協調
  • リーチングとグラスピング
  • 上肢の運動の手引きにおける感覚情報の役割[多関節制御/視覚と固有感 覚/速さと正確さ/平衡点仮説]
  • 随意的上肢運動に対する体姿勢の影響
  • 両手の協調:右手は左手が何をしているかを本当に知っているか?
  • 子供の上肢の運動制御の発達

7章 運動学習の神経科学

  • 運動学習の紹介[概念/定義/運動学習の理論/可塑性]
  • 運動学習に関わる神経構造[宣言記憶と手順記憶/求心性情報の役割/運動学習に伴う脊髄の適応性/大脳皮質/記憶の並列処理と多重描写]
  • 運動学習の生理学[シナプス変化/長期増強と長期抑圧/長期記憶:遺伝子とタンパク質]
  • トレーニングによる神経内変化[塑性変化の所在/経験依存変化/可塑性に貢献するメカニズム]
  • 発育期の可塑性と成人の運動学習[発育中の可塑性過程/発育期と成人の可塑性の差異/発育期と成人の学習における共通メカニズム]
  • 運動学習に影響を与える要因[習得と保持/練習期のグルーピング/感覚フィードバック:トレーニングと練習環境の特異性/増強フィード バック:結果の既知/部分および全体課題練習/疲労と運動学習/メンタルイメージ/音と運動学習/ニコチン、グルタミン酸塩、および他の薬理学的影響]
  • 脳損傷後の運動学習[運動回復の理論/特定脳部位に伴う運動学習欠損/ トレーニングおよびリハビリテーションの効果]

 

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